製造国:イタリア
オルヴィエート、ヴィテルボ、
またはイタリア中部の窯と思われます
年代:16〜18世紀頃
素材:陶器(錫釉マヨリカ)
サイズ:幅12cm(取手含む18cm)、 高さ6cm
「マヨリカ・アルカイカ」——初期マヨリカ。
13世紀、イスラム圏から地中海を渡って伝わった錫釉の技法が、
イタリアの土の上にはじめて花を咲かせた姿です。
使える色は、銅の緑(ラミーナ)とマンガンの褐色、たった二色。
ルネサンスの華やかな多色彩画が生まれるよりも前——
イタリア陶芸の、もっとも原初的な表現がここにあります。
オルヴィエート、ヴィテルボ、ピサ、ファエンツァなど、
中部イタリアの都市の窯で焼かれ、
鳥、魚、鹿、紋章、植物が好んで描かれました。
見込みの底に、一羽の鳥。
緑と褐色——二色だけの筆で、
のびやかに描かれています。
輪のようにひらいた両の耳を持つこの形は、
中世イタリアの食卓で日々使われた「スコデッラ」。
スープや穀物粥を盛るための、暮らしの器でした。
錫の白釉は、数百年のうちにバニラ色へと沈み、
全体を覆う貫入が、細かな地図のように走っています。
縁やハンドルから釉薬が剥がれ、あらわになった土の色。
その一つひとつが、この器が越えてきた時間の記録です。
美術館のガラスケースの中ではなく、
誰かの日々の食卓にあった、名もなき職人の仕事。
それが何世紀もの時間を経て、いま、ここに届いている——
そのこと自体が、静かな奇跡のような一点です。
飾り棚や窓辺に。
手のひらに乗る、小さな中世の断片です。
欠けも、ひびも、くすみも——
どれひとつ、人の手では再現できないもの。
長い年月だけが作ることのできる表情が、
この小さな器には宿っています。
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